収穫

宇宙の芸
自然の術
人の炎
穏やかに丸くまっかなりんご


峠に登り
山を越えて
子等は健やかで大きくなり
心は鮮やかに自由に時間の空を飛び回る
生臭く
荒っぽく
冷酷に
それらがかき回されて一つになるとなんと喜びの毎日であることか
マイナスとマイナスを掛け合わせるとプラスになってしまうのはまさしく哲学的です
果樹園の周囲にはいつしか一つの小宇宙が出来上がった
東の園への入口には狐のバリアーがある
南の林の中には狸のつがいがいる
この夏 
西の林からカモシカがのっそり出てきて果樹園を優雅に横切った
北側の崖の林のなかは小鳥たちのサロンだ


蜜蜂が飛び
蝉が鳴き
そして今 
赤とんぼが高い空を舞う


時は来た
山々は錦で果樹園を包み祝福している
空は底無しの明るさだ
燃えたぎる情熱がたわわに実ったまっかなりんごに焼き付いて
果樹園を
人の胸のちっちゃな炎を大自然へ
大空へ
燃えたぎる銀河の渦のなかへ連れていく


ほんとに
ほんとに
待ちに待った収穫だ
みなの衆
さあ
りんごをもごうよ
りんごもぎに来た人達
収穫の時を迎える